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残業代って

2006.08.16

不思議ですよね。

仕事ができる人というのは、普通の人が12時間かかる仕事を8時間で終わらせて定時で退社できる代わりに、12時間かけて仕事をする普通の人がもらえる残業代をもらえないのですから。

仕事ができない人の方がたくさんもらえるというのは…あまり突き詰めてはいけないところかも知れませんが…。

残業で思い出すのがソフトウェア業界。最初はこの業界の末端でキャリアをスタートさせただけに、思い出がいっぱいあります。毎日のように深夜まで残業するのが当たり前で、朝昼晩すべての食事を会社で済ませていたり、家にはシャワーを浴びて睡眠をとるためだけに帰ることが日常化していたり、夜中になると妙にテンションが高くなって同僚と交わすしょうもない雑談がやたらと面白かったり。

一言でいえば、荒んでいるのですが、そんな楽しい仕事をしている間にも残業代は休みなくチャージされていくわけですから、負担する会社としてはたまりません。

以前いた会社にはタイムカードがなく、勤怠に関しては自己申告だったため、夜中まで仕事をしても進捗が思わしくなければ、その分はカウントに入れない、という人もけっこういました(このことの是非はともかく、そういう意味では非常にまじめな会社でした)。

ソフトウェア業界の見積もりというのは、1つのシステムを作るのに必要な時間を人日(1人の技術者が1日稼働する時間)という単位で見積もり、これに人日単価を掛けて算出します。もちろん、見積もった人日よりも少ない時間で仕事を終えることができれば利益を上積みできますし、逆に多くかかれば利益が目減りし、最悪の場合赤字となります。

ソフトウェアという製品の製造コストのほとんどは人件費です。

赤字になるのは、納期に間に合わせるために追加メンバーを投入して当初の人員計画(=コスト計画)を超過するからと考えられます。もちろん追加メンバーを入れなくても、残業代がかさめば同じことでしょう。

会社の立場からすれば、仮に追加メンバーを入れずに既存メンバーに残業してもらうことで乗り切り、しかも、残業代を一切支払わなければ、見積もり通りの利益は確保することができます。

一方働く側から考えてみると、会社からもらえる給料の原資はいま自分の目の前にある仕事です。例えば、単純化して、ある会社から受注したシステム開発の仕事が1人月かかるもので見積もり100万円だとしたら、その仕事からもらえる給料はこの100万円から利益と間接費と経費などを差し引いた残りとなります。

この金額以上に人件費を使ってしまうと、利益が減っていくことになります。

そこで、

 ・見積もった人月よりも少ない時間で終えられた人にはポイントを付与
 ・見積もりよりも多くかかった人からはポイントを剥奪(ゼロの人はマイナスになる)
 ・1ヶ月ごとにポイントを集計し、給与に反映
 ・例えば、
  ・160時間の見積もりに対して150時間で終えたAさんは+10ポイント
  ・160時間の見積もりに対して190時間かかったBさんは−30ポイント
  ・給与には1ポイント1000円として反映
  ・Aさんは+1万円のボーナス、Bさんは−3万円の減給
 ・これに伴い、残業代は廃止

という制度を取り入れてみたらどうなるでしょう。

これは、利益貢献した人には応分をボーナスとして支払う代わりに、赤字貢献した人からは減給するという仕組みです。生産性の高い人がもらえるボーナスの原資は生産性の高くない人から徴収されるわけです。

会社の立場からすれば、非常にありがたい話ですが、働く側からすると恐ろしい仕組みです(厳密には偏差値のような仕組みを取り入れた方が良いのでしょうが、話を単純にするためにとりあえず)。

効率の悪い人は次々と淘汰され、残るのは効率の良い仕事術をいかに人に知られずに自分の仕事に活かすかをひたすら考える人ばかり、というこれまた荒んだ状況になってしまいそうです。

いわゆるゼロサムゲーム(参加者の得点と失点の合計が常にゼロになるゲーム)であり、何かを競い合うゲームならともかく、皆で協力し合って何か1つのことを成し遂げようとする状況ではあまりふさわしくない仕組みと言えるでしょう。

ただ、一人で仕事をする分には、モチベーションを維持する上で、むしろ良い仕組みだと思います。というより、そもそも残業の概念がないフリーランスの人は、デフォルトでこの仕組みのもとで仕事をすることになりますね。

投稿者 : 大橋 悦夫 | 投稿日時 : 2006.08.16 09:12

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