やる気が出る条件
2007.06.21
仕事であれ、家事であれ、人がやる気を出す上で不可欠なのが、それをしなければ何かを失う、という危機感だと思います。
夏休みの宿題を8月31日までやらずに放置してしまうのは、これを超えると、先生に怒られることで、それまでの自分が築き上げてきた「良い子」というブランドが危機に瀕するからでしょう。
でも、多くの同級生が9月に入った時点で、宿題をすべて終わらせていないという状況であれば、それがスタンダードになるため、8月31日ですべてを終えることができなくても「まぁ、残りは9月に入ってからでもいいかな」という逃げ道が生まれるようになります。
仕事でも、「やむを得ないので、締め切りを延ばしてもらおう」とか「この案件は仕方がないから諦めよう」といった選択肢もないわけではありませんが、あくまでも最終手段です。なぜなら、周りには締め切りを守らない人がそんなにたくさんいるわけではないからです。そんな中で踏み倒せば、非常に目立ちますから、必然的に被るダメージも大きくなるでしょう。
追い詰められる前に
では、時計の針をもう少し戻して、締め切りギリギリまで追い詰められてしまう前に何らかの手を打てないかを考えてみます。なぜ、締め切りまでに余裕がある時にやる気が出てこないのか。言うまでもなく、やらなくても失うものがまだ少ないためでしょう。つまり、余裕が油断を生み出すわけです。
であれば、締め切りまでに十分な時間が残っている段階でも、やらなければ何かを失いうる状況を作ればよさそうです。すぐに思いつくのは、締め切りに先だって自分の中での締め切りを設定すること。「夏休みの宿題を7月中に終わらせなければ、8月の旅行はキャンセルする」などがこの例です。
でも、この締め切りは自分で設定したものですし、自ら旅行のキャンセルをするのは気の進まないことでしょう。こうした「自分でどうにでもできてしまう」制約は役に立ちません。
これは、5分前に自分で仕掛けた黒板消しのことを忘れて、教室に入ろうとしたときに、それを「食らう」ようなものです。つまり、カラクリがわかってしまっているために、「7月中に終えなくても旅行に行けなくなることはない」と心のどこかで油断しているのです。
油断を防ぐために
そこで、仕掛けをもう少し複雑にします。例えば、AとBの2つの異なる仕事を抱えている時、今日中にどちらかを終えなければならないとします。でも、締め切りは3日後なので、実際にはどちらも今日中に終える必要はありません。でも、どちらかでも今日中に終えられれば、非常に楽になるでしょう(言うまでもなく最悪なのは、両方ともやらずに今日を終えてしまうこと)。
実は、AもBもあまり気の進む仕事ではありません。そこで、今度は自分の好きなことC(明日が最終日の映画を観に行く、友人と飲みに行くなど仕事以外のこと)を持ち出します。そして、以下のいずれかのオプションを選ぶ状況をつくります。
1.AもBも終えられたら、明日Cをやってよい(最高)
2.Aを終えればCをやってよい(Bは明日やる)
3.Bを終えればCをやってよい(Aは明日やる)
4.AもBも終えられなければCはやってはいけない(最悪)
ポイントは、Cを自分のコントロール外のものにすること。明日が最終日の映画であれば、今日か明日に観に行く必要があります。でも、仕事をほったらかしにして後で苦しむことは避けたいものです。そうなれば、両立させようとするでしょう。「明日が最終日」という制約は自分ではどうにもできないことですから、どうにかしたい、と思うものです。ここで、やる気が生まれます。
最高なのは、AもBも今日中に終えてしまって、安心して明日に映画を観に行くことです。でも、おそらく「ここまでの苦労をしてまで観るほどの映画か?」などという迷いが生まれるでしょう。負荷とご褒美とを天秤にかけ始めるのです。
そこで、どちらか一方だけを終わらせるという負荷軽減バージョンを用意するわけです。両方終わらせることに比べれば、断然楽なので、終わらせてしまおうか、というやる気が生まれます。
このオプションを選ぶ後押しとなるのが、最悪パターンである「両方とも終えられなかった場合」の存在です。つまり、自分の取り得る選択肢の最高と最悪とその間を眺めることによって、納得したうえで選ぶことができるわけです。
メリットに見合うストレスを
やる気は、時間と密接に関係しています。やるべきことに対して、残り時間が十分になければやる気がなくなりますし、残り時間が多すぎても油断してやる気の出し惜しみをするでしょう。ちょうどぴったりの時間、あるいは終わるか終わらないかぐらいの時間しかない時にやる気は最大化されます。
やろうと思えばAもBも両方終えられるくらいの時間があるとき、どちらもやらずにだらだらしてしまうのを避けるためには、他の予定を入れて、どちらか一方しか終えられない状況を作ることで、「Aだけでも(あるいはBだけでも)終わらせよう」というやる気が生まれます。
つまり、あえて遊びの予定を入れることで、ギリギリまで追い詰めることができ、それによってやる気を呼び出すわけです。
心を鬼にして「どちらも今日中に終わらせよう」という気合いを入れるのもよいのですが、これは「7月中に夏休みの宿題をすべて終える」という決心をするのと同様、厳しいものになるはずです。なぜなら、それほどペースを早めたところで、それに見合う具体的なメリットが期待できないからです。
投稿者 : 大橋 悦夫 | 投稿日時 : 2007.06.21 09:47





