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弾み車に拍車を掛ける

2010.01.13

前回に引き続き、村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』より。

ただ黙々と時間をかけて距離を走る。速く走りたいと感じればそれなりにスピードも出すが、たとえペースを上げてもその時間を短くし、身体が今感じている気持ちの良さをそのまま明日に持ち越すように心がける。

長編小説を書いているときと同じ要領だ。もっと書き続けられそうなところで、思い切って筆を置く。そうすれば翌日の作業の取りかかりが楽になる。アーネスト・ヘミングウェイもたしか似たようなことを書いていた。

継続すること──リズムを断ち切らないこと。長期的な作業にとってはそれが重要だ。いったんリズムが設定されてしまえば、あとはなんとでもなる。しかし弾み車が一定の速度で確実に回り始めるまでは、継続についてどんなに気をつかっても気をつかいすぎることはない。

特に最後のパラグラフは、まさに仕事そのものと言えるのではないでしょうか。回り始めるまでは回り続けられるようになることなどとても想像できないものです。

仕事にとどまらず、人生そのものと言ってもいいかもしれません。

やったことに対して、相応の成果をすぐに要求するのが人間です。赤ん坊が泣きわめくことで母親の愛を手にするかのように。

大人になることの意味は、このタイムラグを伸ばしていくことなのではないでしょうか。それが延びきった瞬間が、人が本当の意味で大人になるとき、すなわち親になるとき。

 
いつか弾み車に拍車がかかる日を想いながら、日々走っています。

走ることについて語るときに僕の語ること
村上 春樹
文藝春秋 ( 2007-10-12 )
ISBN: 9784163695808
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


投稿者 : 大橋 悦夫 | 投稿日時 : 2010.01.13 23:59

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