今年のイチオシ心理学本
2007.12.22
昨日に引き続き、「今年一年を振り返って」。
今日は読書感想文にしたいと思います。 「今年のベスト10」などにすると、分野もばらけるし、リストも七番目くらいになると、読む方も面倒くさくなってくると思いますので、分野を心理学に絞り、ベスト1だけにします。
と思ったのですが、どうしても1冊に絞りきれませんでした。なので、単行本1冊、文庫1冊の、計2冊ということにします。
まずは単行本の方から。
![]() | 社会化した脳 村井 俊哉 エクスナレッジ 2007-10 by G-Tools |
あまり知られていない本ですが、大変素晴らしい本です。
そもそも、社会的生物としての人間を、脳科学的にどう捉えるかというテーマで書かれた本自体、多くはないのですが、本書はそれらの中でも群を抜いて読みやすく書かれています。
しかも個々の事例に統一的展望を持たせようという強い意図が実を結んでいます。おかげで、「上側頭溝周辺皮質」とか「前部傍帯状皮質」などという言葉が、解説された内容とともに自然と頭に残ります。ふつうは、読んだときにしか意識できないような難解用語なのですが。
社会脳科学を専攻している人はともかく、本書で読者にさらりと与えられる脳の「社会的側面」を一望することは、脳科学の専門書を読んでいては、ほとんど不可能と言っていいほどです。本書は、苦痛がほとんどないわりに知識が急速に拡大していくという、コストパフォーマンスが非常に高い本です。
次に文庫の方。
![]() | 精神鑑定 脳から心を読む (講談社文庫) 福島 章 講談社 2006-12-15 by G-Tools |
それほどの単行本がありながら、ベスト1に絞り込めなかったわけは、この本の存在です。
福島章先生は、「精神鑑定」関連書籍の第一人者といってよいかと思いますが、その福島先生が「精神鑑定というものについて」解説された文庫がこれです。
本書は内容的に見れば「面白いというよりはためになる」本ですが、それでいて大変読ませる内容になっています。
おそらく一般の方にとって「精神鑑定」というのは、テレビドラマに出てくる時にだけ意識する程度の、決して身近とは言えない話題でしょう。
専門家の手によってもきわめて困難な作業であり、しかも専門家の間でも見解の相違が時に甚だしいという、一般的に周知されにくい話題だとしてもやむを得ないところがあります。
それでもこれまでは、まあそれで良かったわけですが、今後大きく事態が変わる可能性があります。陪審員制度が導入されるからです。
むろん専門家ほどには「被告の精神状態」などの判断について責任を負うことにはならないでしょうが、「精神鑑定なんて、宛にならねえんじゃねーの?」では済まなくなるかもしれません。
私たちは、「他人が「正気」かどうか」をどうやって科学的(客観的)に分別しようとしているか。あるいはそもそもそんなことをしようと努力しなくても良いのか。ということを話題にした本としては、現時点では最高の一冊です。
投稿者 : 佐々木 正悟 | 投稿日時 : 2007.12.22 15:18







