バンデューラの観察学習
2009.11.05
今週は、少々変則的に始めてしまったので、来週以降するお話しの予告編ということにさせてください。
「観察学習」という概念は非常に重要です。先週のテーマだった「行動科学」は、一時アメリカ心理学会を席捲する勢いでしたが、それがいくつかの学説や実験結果のおかげで、徐々に後退させられていきます。「観察学習」の発見も、それに間違いなく一役買っています。
(とはいえ、この概念自体が行動科学の重要な概念ですし、行動科学という学派は、心理学上重要な地位を占めている点に違いはありません)。
言葉の定義ですが、「観察学習」とは辞書によると次の通りです。
自ら直接に経験したり,外部から強化を受けなくとも,他者(モデル)の行動を観察するだけで,その行動型を習得する学習をいう。モデルは実際の人物だけではなく,テレビ・ラジオなどのメディアを通しても呈示される。また,言語的あるいは映像的に表現された行動も観察学習の対象となることから,広範に学習内容が伝達されうる。観察学習は,バンデューラが社会的学習理論を提唱するうえで中心においた学習であり,モデルを観察することによってある反応を習得することから,モデリングともよばれている。[株式会社有斐閣 心理学辞典]
簡単に言うと、実際に行動したり、経験したりしなくても、「観察」しただけでモデルの行動を模倣することができる、という発見です。
ピアノを弾いているところを見ただけで、ピアノが弾けるようにはなりませんが、iPhoneを使っているところを見れば、同じような操作はできます。
これを拡大し、たとえば親が頻繁に暴力をふるっている様を見て、その子の攻撃行動が増す、という報告がなされることになります。
さらに、想像ができると思いますが、テレビでボクシングの試合をたくさん見ると、視聴者の攻撃行動が増すのだ、と主張する論拠にもできそうです。
なぜこれがそれほど重要な概念かというと、伝統的な「行動科学」の考え方からすると、「観察」だけで「行動」が強化されるというのは、説明しづらいからです。
「心の内部」や「内面性」をなるべく否定的に見る「行動科学」の立場からすると、「観察」という「内面」だけで「行動」を学習できてしまうというのは、扱いにくい現象なのです。

投稿者 : 佐々木 正悟 | 投稿日時 : 2009.11.05 00:53



