消去【ショウキョ】extinction
2009.11.11
行動科学の用語です。
条件づけによって形成された反応が、強化されないために、その遂行が減衰してゆく過程か手続のことを言います。
一般的な人にとっては、「強化」より「消去」のほうが、行動科学の有効性を享受できるように私は思っています。「ついついやってしまう何か」を、報酬によって強化しないように工夫することで、行動は「消去」できるからです。
ソーンダイクやパヴロフなどは、反応の消失を十分に説明できなかったといわれています。
私の父が昔、「禁煙」の努力をしていたことを思い出します。たばこを「すっぱり止めよう」とする父に向かって母がこう言ったものです。「そんなに急に全部止めようとしないで、徐々に減らしていったら?
6本、5本、4本・・・」といったように。
父は即座に却下しました。「それは無理だ。一本でも吸ったら吸いたくなる。吸うのを止めるか、吸い続けるか、どっちかしかできないんだ」
今から考えてみると、行動科学的には、父が正しかったと思います。厳密には父に尋ねなければわからないこともありますが、明らかに報酬系を嗜好品が興奮させるとすると、刺激される数を減らせば、快感はむしろ増大しそうです。意識的にやると特にそうなります。
また、「減らす数や時間に対する比率」を厳密にコントロールすればいいですが、父はそんなにきっちりした人間ではありませんし、ふつうの人には難しいでしょう。コンピュータも何もなかった時代のことです。漠然と「数を徐々に減らす」という程度の考え方では、むしろ「部分強化」になってしまいます。「部分強化」では「消去抵抗」を強める、つまりたばこであればかえって止めがたくなるのは、よく知られています。
結果として父は、禁煙がうまくいきました。だから今吸っていません。
このとき私は子供だったので、ほとんどの事柄を忘れてしまったのですが、今思えば惜しいことをしました。ただ父はいろんなことを試みていたし、いろんなことを喋っていました。そのことを考え合わせると、人間は報酬も罰も「解釈する」ので、その解釈次第で、強化の意味も消去の意味も、いちいち変化すると考えざるを得ないと思っています。
投稿者 : 佐々木 正悟 | 投稿日時 : 2009.11.11 01:00



