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『ツレがうつになりまして。』

2007.08.23

私は心理学ジャーナリストという職業柄、メンタル系の本はよく読みます。「うつ」系の本も、特に理由もなくたくさん読みました。

そのなかでも、『ツレがうつになりまして。』(以下『ツレうつ』)はとてもよいマンガです。

・さっと読めます
・自分がうつになったら、きっと思考がこんなふうに展開してしまうのだろうということが、非常にわかりやすく表現されています
・自分の家族がうつになったら、おそらくはこういうふうに反応するだろう、という点も、リアルに描けていてわかりやすいです


この本は、ほのぼのとした絵柄で、シリアスさがあまり感じられないように読みますが、中にはかなり恐ろしいことも入ってきています。

たとえば、うつになったばかりの「ツレ」さんが、ホームで「声」を聞きます。こんな声です。
「敵は自分自身だ」
「必ずしとめるんだ」
「オマエはゴミでクズで最低の人間だ」
「死んだ方が世の中のためだっ」
「ホラ 今だっ」
細川貂々『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)

こんな「声」がいったいどこからしてくるのでしょう? といえば「自分の中」からなのですが、そうはまず感じないはずです。ちょうど夢の中に私の祖父が出てきたとき、その祖父を実は自分の脳が「作り出している」とは決して感じられないように。

精神障害の難しさは、起きていて夢を見ているようになってしまうところにもあります。(夢見と精神障害とは異なりますが。)それは、ふつう私たちが知っている問題への対処の仕方である、「考え方」や「気の持ちよう」の問題とは、次元を完全に異にするのです。

夢の中で、数学の難問をどれほど「正しく」解いたとしても、あるいは交通マナーをキチンと守って「正しく」運転していたとしても、それらの「正しさ」は前 提条件が間違っている(テストも受けていなければ、運転してもいない)ため、「正しい(前向きな、明るい)考え方」というアプローチが、あまり意味をなさ ず、場合によってはきわめて有害になってしまいかねないわけです。

投稿者 : 佐々木 正悟 | 投稿日時 : 2007.08.23 15:29

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