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2008.02.12
第14回(4) 楽天技術研究所森氏「ネットで起こる次のインパクトは何をどう変えるか」自分とチームメンバーのひらめきを尊重することで、魔法のような成果を挙げることが出来るとお話くださった楽天技術研究所 代表 森氏。最終回では、未来ビジョン「サード・リアリティ」の構想をベースに、インターネット業界のこれからについてお聞きします。

■森さんにとってインターネットのおもしろさって何ですか。
ちょっと話がずれますが、僕は小学生の頃、ゲームが大好きで、PC88でザナドゥとか夢中になってやっていました。あの頃のゲームって、ゲームの製作者と、ゲームのプレイヤーの距離が近かったんですよね。今のインターネット業界には同じような匂いを感じます。
■ゲーム黎明期の頃に似ているんですね。
あの頃はゲームを作っているのは、大学生のアルバイトの人ってことも普通にありました。今のインターネットも同じ。インターネットの有名人にも、学生から大企業のエンジニアまでいろんな人がいますよね。
■メーカーとプレイヤーの距離が近い感じが似ているんですね。
更に言うと、Web2.0って、ドリフターズの「8時だョ!全員集合」に近いんですよ。
■ドリフですか。
ドリフターズのコントは、公会堂でお客さんを呼んで公開録画でしたよね。志村けんの後ろに幽霊が出て、それを公会堂で見ている小学生たちが「志村、後ろ!後ろ!」って叫んで、気づいた志村けんが振り返っておもしろおかしく驚く、というのをテレビで見ている僕たちがいるという構図です。シェアをシェアする、あの感覚です。インターネットで表現するなら、それがWeb2.0、言ってしまうとニコニコ動画が作り出している感覚と似てると思います。
■楽しさをやり取りしている人達がいて、それを眺めるのも楽しいという構図ですか。
楽天市場もそうです。楽天市場はただ通販をネット化したんじゃないんですよ。店舗さんの思いに、購買者が応えてるんです。楽天市場の店舗さんには、思いのこもった商品説明を書く店舗さんが多くあります。その商品はどのような経緯でお店に入荷して、どんな魅力があるか、ページを何度スクロールしても商品購入ボタンが出てこないくらいの長い長い説明文も少なくありません。読み手は、その店舗の商品を売りたい気持ちではなく、商品への愛情を受け取りますよね。それを購買者がフィードバックするんです。「8時だョ!全員集合」と同じ感覚ですよ。
■インターネット業界に訪れる次の変化とは何ですか。
変化の予兆は、如実に日々感じてます。これまでの10年間は、パソコンを使って、ログインして、ネットにつないで書き込むということが一般的になったことで、電話がn:nになったくらいの実感ですよね。データ同士がつながり、CGM的に社会的な意思形成の基盤が確立してきた10年だったと思います。
■これからはどうなりますか。
これからは、ネットは無意識化すると思っています。パソコンからモバイルになって、若い世代はメインにモバイルを使って、その小さな画面でそれまでやっていたコミュニケーションや買い物を済ませることも増えてきています。つながるかどうかは気にするけど、インターネットに接続していることはもう意識しませんよね。
■知らず知らずにネットを利用している状態ですね。
同様にITネットワークに接続されているけど、そのことを意識しない端末が増えてきています。例えば、デジタルサイネージ。電子ボードのようなものです。テレビのように画像が見れるボードの近くで携帯を掲げるとクーポンが落とせるなんてことがさりげなく始まっています。
■さまざまな端末がネットを通じてサービスを提供しているんですね。
「Edy」や「Suica」など電子マネーの普及と、ポイントによる決裁もそうです。先日飲み会をして、「一人3000円です、回収しますよ。」と言ったら、「Edyだから今払えません」って。飲み会があるとわかってたら、キャッシュ持ってきなよ!と。
■お金持ってきてないんですか。
そうなんです。インターネットは、Web2.0で進化が止まってしまっていると考えている人が時々いるようなんですが、本当のすごい変化はこれからです。それの予兆が、携帯電話、「Edy」や「Suica」の事象に現れています。我々は、知らないうちに次の変化に移行します。それも思っているより早くその時は来るかもしれません。
■近い将来、大きな変化が訪れるということですか。
このようにITネットワークを意識しない仕組みが、人の行動や考え方を変えていくと、ITネットワーク側ではバックエンドの処理が増加します。今のe-コマースのやり方や、インターネットサービス企業がどんな技術を持っていればいいかということも変わってきて、提供する形とか、ビジネスの形も変わっていくでしょうね。
■森さんはその変化を楽天で迎える準備をされているんですね。
我々は今、楽天技術研究所フェローのまつもとさんとの共同研究で、大規模分散処理技術に取り組んでいます。具体的には、分散処理基盤となる「fairy(フェアリー)」と、「ROMA(ローマ)」というグリッド・システムを作っています。この領域は、業界各社が同様の研究を行なっています。例えば、もちろん何よりも先行している米グーグルの「GFS(Google File System)」、それから米ヤフーの「Hadoop(ハドゥープ)」、それから米オラクルが買収して提供しようとしている「Coherence(コヒーレンス)」、米アマゾンの「Dynamo(ダイナモ)」。「Dynamo」は、「ROMA」の構想後にその存在を知ったのですが、あまりに同じ発想だったので驚きました。
必要だと思う技術に対し、同じような発想で着手しているというこの状況には、同時代性のようなものを感じています。われわれの主戦場ですね。
■担うエンジニアにとってこの変化はどういう意味を持ちますか。
すごく面白いと思います。かつエンジニアが中心になります。
■面白いというのはどういうことでしょうか。
大きなレベルになりますが、インターネットの影響で、ここのところ学術界の研究がおもしろくなってきています。今までの研究に加え、インターネットで得られた知識や、大量にあるWebコンテンツの生データの活用が進み、言語処理やマルチメディアの新しいアルゴリズムがどんどん進化しているんです。
■学術界が盛り上がると何が起きますか。
個々のエンジニアが学術界で作られた最新のアルゴリズムやライブラリを利用して何かを作ったり、学術界のフィードバックを得られたりするようになります。例えば、学術界で作られた、認識率の高い画像の検索エンジンを、個人が自由にマッシュアップしたり、いじくったり、ハックすることができるかもしれないですよ。これからは、エンジニアにとっては挑戦しがいがあって、しかも知的好奇心も満たされる時代になりますね。
■エンジニアが変化に対応するにはどうすればよいですか。
とにかく、新しいものに飛びかかって、それをハッキングしたり、解体したりするのが一番早道だと思います。解体して、その裏側まで分かってきたら、今訪れている変化が社会的にどんな因果をもった変化かを言葉にできなくても、それを感覚として自分がどんな技術が必要かを知ることができるはずです。変化についていくにはそれしかありません。
■使うだけじゃだめなんですね。解体ですか。
はい。改造とか。リバースエンジニアリングですよ。日々ハック、日々解体。エンジニアは、もったいなくても、買ったマシンは解体してください。(笑)中身まで知ることが重要です。
■なんだかわくわくしてきました。
とにかくわかるのは、この状況はすごく楽しいってこと。この状況をもっと多くの人と楽しみたいと思ってます。我々もうかうかしていられません。
■お話ありがとうございました。
楽天技術研究所 森氏へのインタビューは今回で最終回です。
次回お楽しみに。
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投稿日時 : 2008.02.12 09:46
2008.02.05
常に目の前にある課題から「逃げない」ことが重要だと語る楽天技術研究所 代表の森氏。(3)では、転職に至った経緯と、困難な課題を乗り切るためのチームワークの作り方について、森氏のポリシーをお伺いします。

■その後はどうされていたんですか。
2005-2006年は、またちょっと違う仕事をしていました。物流会社の戦略コンサルティングとIT投資の立案をやりつつ、並行して、当時、アクセンチュアのアジア・パシフィックの研究所を設立する動きがあったのですが、それに関連した様々な業務をしていました。
■研究所設立ですか。
シリコンバレーの近くに、パロアルトという歴史的にも偉業を成し遂げたAT&TやXeroxの研究所がある、研究者にとっての聖地のような場所があるんですが、アクセンチュアもパロアルトに研究所を持っていて、そこに行って研究所や研究者について調査したり、世界に3箇所にあったアクセンチュアの研究所の研究資料の日本語訳を監修したり、研究所のビジョンを紹介する資料を作成したり、日本のエクゼクティブにアクセンチュアの研究内容を紹介するセミナーを実施したり、日本での研究オフィス設立企画やアジア・パシフィックで研究所を作るにあたっての手伝いをしていました。
■転職するお気持ちはどう高まっていったのでしょう。
これらの仕事を通じて、実際に世界各国のコンサルタントやインフラのスペシャリストや研究者と話し合っていくうちに、自分の中でいろいろな問題意識が生まれました。
■問題意識ですか。
ひとつは、タイムマシン経営への違和感です。アメリカで流行った技術は1年後日本で流行ります。日本のIT/インターネット業界では、その時差を利用したビジネスが多いんです。中国や、マニラ、インドのオフショアの話を聞くにあたり、日本発の何かを作っていく必要性を強く考えるようになりました。だから次は日本の会社に転職しようと思いました。
■日本の会社が良かったんですね。
それから、研究所で様々な研究を見ていくにつれ、世の中はインターネットの可能性を過小評価していると感じるようになりました。インターネットが、センサーやICタグ等のユビキタス系デバイスと融合していくと、すごい展開が起きて、その後に大きなインパクトがやってくると思いました。当時僕のいた、コンサルティング業界のターゲットは企業の基幹系システムがメイン。ここにいては、そのインパクトに立ち会えない、でも立ち会いたい、インターネットをビジネスにする企業に行こうと思いました。
■日本で、インターネットをビジネスにする会社ですか。
最後に、本当に役に立つ研究開発というプロセスを実装してみたいという思いです。大学の情報理工学部系の学部イベントで、大学の研究室が企業の人を招き、自分達の研究をお披露目することがあります。ところが実際に、研究や先端技術を説明しているうちに、大学側も企業側も「それって何に役にたつんですかね」となってしまう場面に遭遇することも少なくありません。研究開発とビジネスを繋ぎたいと考えました。
■日本発の何かを作るための仕組みですね。
技術を確保する手段としては様々なオプションがあります。どこかに発注してもいいし、自分達で勉強してもいいし、M&Aで買ってもいい。でも、ある部分は自分達でやらなければ、技術をコントロールする能力が組織に身につきません。だから企業が技術をガバナンスするためのインプットとなる研究開発は重要で、本当に役に立つ研究開発を組織化してみたいと思いました。
■その結果が楽天株式会社ですね。
漠然と、楽天だなと思っていましたが、加えて人の縁もありました。
■どなたかに誘われてですか。
アクセンチュア時代のメンバーのひとりが楽天にいて、彼のセッティングで、楽天の開発担当執行役員であった安武を紹介されまして。お会いして、自分のやりたかったことが楽天で出来ることがわかりました。
■今はどういったお仕事をされているんですか。
研究所の代表として、研究所の立ち上げとマネジメントを担当しています。そのほかにも、研究所のコンセプト作りや、話題の新しい技術を楽天のビジネスに導入していくという仕事をしています。取り組んだうちの一つには、Ruby on Railsを楽天の開発に導入するという企画があります。他にも、電気通信大学とマルチメディアに関する一連の共同研究、Ruby開発者まつもとゆきひろ氏 楽天技術研究所フェローとの大規模分散に関する共同研究なども行っています。
■森さんの仕事上のポリシーってありますか。
今までの経験の中では、すごく困難なプロジェクトにアサインされることが何度もありました。そういう時には、マジックが必要だと思っています。
■マジックですか。
そのために、ひらめきを大事にします。自分のひらめきもそうですが、メンバーひとりひとりのひらめきを尊重することが大事だと考えています。その人が、その瞬間、そういうことを言ったということには、なんらか訳があると言う事を忘れないようにしています。
■訳を考えることが大事ということでしょうか。
明らかに論理的に間違っていることを発言したとしても、その人がこの状況の中で発言したのには何らかの意味があるはずだと理解するように努めます。その人のやりたいことや、主張していること、反抗していること、表情、それから自分自身の嫌だなと思う気持ち、そういう違和感を無視しないようにしています。やりすごさずに、何がおかしいのかをその場で考えて、仕事のやり方かえたり、資料をかえたり、話をしたりします。
■はっと感じた違和感からヒントを得るんですね。
なぜひらめきを尊重する必要があるかというと、ロジックを組んでひらめきを押し殺すより、ひらめきが出た瞬間こそが一番エネルギーが高い、一番いい瞬間なんですね。だからひらめきが消えないうちに動くと、そのエネルギーを利用できるので、すごくスムーズに物事が進むんです。思いついた瞬間にやるのが一番早いってことですね。
■ひらめいたその瞬間を逃してはいけないということですか。
ひらめきを尊重しようとすると、自然とチームメンバーの表情や声や意見に気を配るようになります。そうすると、瞬間を逃さずに「これやって」と言えたり、逆に「やろうか」と言ったりすることができます。こうやってお互いを生かしていかないとマジックは生まれません。
■お互いを生かすことがマジックを起こすんですね。
これは習慣化してやる必要があります。思いつきで突発的だったり、波があったりすると信頼を損ねるだけです。常に自分のひらめきも相手のひらめきも尊重する。これがうまくいき始めると、それこそ魔法のようにすごい成果を出し始めるんですよね。
■マジックとは、魔法のようなすごい成果が出ることですか。
僕が一番好きな状態は、チームを組んで仕事をしたことで、自分が想像した以上のアイディアが実装されることです。だからチームを組んで仕事をするわけで。アイディアは、一人より複数で出し合ったほうが、それも仲の良い人と話しているときに出やすくなりますよね。アイディアを受け止めて、引き出してくれる人が必要なんです。それがチームです。
■マジックは一人じゃ起こせない、チームだから起こせるんですね。
それぞれのひらめきを尊重すると、お互いアイディアが出やすくなって、マジックが起こるんです。今までの仕事の経験を通して得た、僕のポリシーです。
次回は2月12日up予定
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投稿日時 : 2008.02.05 09:33
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