TOP > スペシャルコンテンツ > CTOインタビュー > KLab CTO仙石氏 > 第13回(3) 「エンジニアとしてやってきたこと、CTO としてやっていること」
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2008.01.08
ひょんなことから大企業の研究所から、モバイルコンテンツを作るベンチャー企業へ転職を決めたとおっしゃるKLab株式会社 CTO 仙石氏。(3)では、KLab での技術者として、また CTO としての仕事についてお聞きします。

■大企業から、それこそ新しい小さな会社に転職されてみていかがでしたか。
ベンチャーだからという違いはあまり感じませんでした。研究所でも、大体自分ひとりでテーマを決めて、ひとりで考えて動くことが多かったので、ベンチャーに転職しても、あまり変わりありませんでした。しかも、ケイ・ラボラトリーで私が担当することになったのは、ケータイ (携帯電話)コンテンツではなく、ケータイ上でアプリ動かす実行環境の開発でした。ケータイ Java (KVM) に換わるものを作って、業界のスタンダードにする、というベンチャーらしい、かなり大胆な目標を掲げてスタートしたんですよ。
■ケータイ Java で動くアプリではなく、ケータイ Java そのものに換わるものですか。
はい。Java みたいなバイトコードで動く VM (仮想マシン) を作りたい、それにはバイトコードを生成するコンパイラも必要だ、どうせならソースコードは Java 言語互換にしよう、といった風に、少なくとも私には野心的というか、面白いテーマでしたね。
■入社したときからそういう仕事として引き受けたのでしょうか。
初めて出社した日に、それを作ろうという話になりました。その日のうちに本屋に行き、必要になりそうな技術の参考書を購入し、本を読みながらコーディングを始め、終電ぎりぎりまで一生懸命やるという、これが転職して一日目のスケジュールでした。
■一日目ですか。すごいスピードですね。
すごいスピードというか、それくらいが当たり前だと思っていました。ベンチャー企業に転職したからといって仕事の進め方は何も変わらなかったのですが、面白いことはすぐにやるという私の取り組み方自体が、もともとベンチャーらしいやりかただったのでしょう。
前職の研究所での仕事の進め方も、決して大企業的ではありませんでした。決めたテーマに対して、のめりこんだら寝食を忘れて、休みの日もそのことで頭が一杯というスタイルでした。
■開発メンバーは他にいらっしゃったのですか。
私のほかにもう 1名いましたが、私が入社してまもなく彼は某通信キャリア内での仕事が増えて、社内の業務ができる状態ではなくなりました。なので、基本的に私一人で、会社に来ても誰とも話さないなんてこともありましたね。
■聞けば聞くほど研究職と共通点があるように思えますね。
とにかく最初に動くプロトタイプができるまでは、寝ても醒めてもそのことで頭が一杯で、結局その週のうちにとりあえず動くものを作り上げました。
■ところで、ケイ・ラボラトリー(サイバードの一部門、後に分社独立して KLab)を選ばれた理由は何ですか。
理由のひとつは、たまたまエージェントに紹介された会社であったこと、もうひとつは面接ですごく話が盛り上がったことです。
■社長とのお話ですか。
社長というか、当時ケイ・ラボラトリーはサイバードの一部門でしたので、サイバード副社長 (当時) の真田が部門長を兼任し、社員は技術者一人だけでした。真田は、面接開始直後に用事があるといって出かけて行ってしまいましたので、もうひとりいた技術者との話です。
これから立ち上げる会社なので、会社の話というよりは、それぞれが自分の好きな技術の話をしました。人工知能の話とか、Java の話とかですね。昼過ぎに始まった面談が、「ああおもしろかった」、「また会いましょう」といって別れてビルの外に出たら、外は真っ暗でした。だから 4, 5時間はいたことになりますね。面接の時間としては非常識ともいえる長さでした。 出かけた真田が戻ってきて、「またいたのか!」と驚いていた覚えがあります。
■面接が盛り上がったということがポイントなんですね。
ベンチャー立ち上げという今まで夢想すらしたことがなかったことに挑戦できるチャンスだったので、それを逃したくないという思いも大きかったとは思いますが、一緒に仕事する人と盛り上がることができなければ、そもそも起業などうまくいくはずはありません。何時間も時を忘れて話が盛り上がったというのは、転職を決断する上で重要なポイントでした。
■その後順調に会社は大きくなり今技術者部隊は何人ですか。
社員としては全体の 1/3 くらい、40名くらいですね。KLab では協力会社の方々ともオープンに開発しており、メーリングリストや IRC (チャットシステム) にも入ってもらっていますが、それを含めるともう少し開発部隊の人数は増えますね。
■数人の会社が 150人近い規模になるまで、技術責任者としての仕事に変化はありましたか。
3年前に、開発体制が事業部制に変わりました。それまでは開発部はひとつでその上に開発部長、その上に私のピラミッド構造でしたから、私が全てのオペレーションに責任を持つ形でした。事業部制に変わってからは、それぞれのオペレーションは各事業部の責任者に任せています。そこは大きく変わった点ですね。
■そうすると CTO としての今の業務のメインはどのあたりですか。
どちらかというと対外的な役割ですね。ベンチャー企業にとっては、優れた人材の採用は常に重要課題です。もっと KLab を多くの技術者に知ってもらいたいし、面白いことをしているということをアピールすることに力を入れています。これからも会社が成長していくために重要なことです。
■会社の規模によってすべての役割が仙石さんに求められた時期もあるわけですね。
実は前職では一人の部下も持ったことがなかったのに、いきなり技術部門の責任者を任されてしまったわけで、マネージメントのイロハを書籍 (一覧はこちら) で学びつつ、学んだことを実践すべく悪戦苦闘していました。今から振り返るとマネージャとしてかなりデタラメでしたが、実地から学ぶという意味では得難い経験をしました。
■初めにやったお仕事は何でしょうか。
もちろん最初の最初は (役員以外は) 技術者ゼロの状態からのスタートですから、毎日のように何人もの採用面接を行なっていました。幸い、当時は技術者の間でもケータイが注目されていたので、スタートしたばかりの会社にしては多くの方々に興味を持って頂けて、順調に技術者を増やしていくことができました。
とはいっても一朝一夕に体制が整うわけもなく、最初の 2年くらいは、私自身がいろんな役割を担う必要がありました。社内のプリンタの調子が悪いから直してくれと私のところへ話が来たり、日曜の晩にサーバが落ちて慌ててデータセンタに駆けつけたり、部下が書いた Java アプリがケータイ実機上だと全く動かないことがサービスイン直前に発覚し、仕方ないから私一人で一晩で全て書き直したりと、いろんなことがありました。
■全部自分でやるしかないわけですね。
同時進行的に一人で何役もの仕事をこなして、なんであんなに働けたのか、自分でも不思議なくらいです。30歳代前半という、まだ体力があった時期だったからこそ、辛うじてやり遂げることができたのでしょうね。転職タイミングがあと 2年遅かったら、とてもあそこまではできなかったんじゃないでしょうか。
会社の中でいろんな役割を果たしてきて思うのは、僕が一番好きなのは結局のところ技術で遊ぶことなんだな、ということですね。マネージャとしての仕事も重要だし、いろんな経験を通してそこそこ身についたんじゃないかと思っていますが、私の本分はそこにはない。ある程度、会社組織が整い、大きくなってきたので、どんどん自分の仕事を部下に任せていっています。
■組織が大きくなるにつれ気にしていることというのはありますか。
私が作ったものをどんどん壊して、新しいものに作り変えていって欲しいと考えています。私が作った当時は妥当なものであったとしても、今や会社の規模も、会社をとりまく外部環境も大きく変わっています。「これは KLab のやりかただから」などと思考停止するのではなく、自らの頭で考え、現在の状況にそぐわないものを捨てる勇気を持って欲しいと思います。
勤務時間の 10% までなら上司に無断で研究開発を行なって構わない、という「どぶろく制度」を作ったのも、アイディアの芽をつぶしたくないという思いからです。新しいことを思いついたら、それが現在の仕事と全く関係がなかったとしても、興味のおもむくままに探求を進めて欲しいですね。そういうことの積み重ねが、会社をよりよい方向へ変えていくのだと思います。
■仙石さんと社内エンジニアの関係はどうありたいですか。
技術者同士でいたいですね。技術の話を普通にしていたいです。
■技術の話ですか。
小ネタでも良いので、技術に関するディスカッションがしたいです。最近は、準備に時間をかけ、なにか大ネタを出そうとする傾向がありますが、もっと早い段階でいろいろディスカッションしたほうが面白いし、多くの人のアイディアを集めれば研究開発も加速するだろうにと思います。
例えば、私が今朝 (9/27) 書いたブログ の内容は、昨晩思いついたことを即席でプログラミングしたものです。まずは、1日単位で思いついたことを、もっとすぐに形にして欲しいなと思います。
■アイディアを思いついたら誰かに言ってみるということですか。
どんな些細なことでも、まずやってみて形にしてみようよ、と思います。最近は、世の中が便利になりすぎたせいか、Google で検索して、そこで見つけた文書を読んで理解したことにしてしまう人が増えていますね。読んで満足してしまってはだめです。実地に試してみないと。
■まずは、手を動かすことが大事ですね。
昔は、誰も試してみたことがない事柄も多く、あったとしてもその情報を手に入れるのにすごく手間がかかりましたので、とにかくやってみて試してみることが当たり前でした。でも、今は調べたいキーワードを検索エンジンに打ち込めば、様々な事例や文書が、それこそ全部読むと日が暮れるくらいの量が見つかりますよね。
■情報がありすぎるのも問題ですね。
他人の事例を子細に検討するよりも、実地に試し、自分で考えるほうが、よっぽどその人のスキルアップになりますよ。車輪の再発明でも良いと思っています。
■車輪の再発明とは何ですか。
既に世の中にあるものを、再び一から作ることです。世の中的には、既にあるものを利用せずに一から作り直してしまうことは、無駄だと考えがちですよね。それは決して無駄じゃないと思うのです。作ったことのない人が、作ってみるということはすごく重要です。私が若かった頃は、車輪の再発明ばかりですよ。なにせ既に市販されている PC と同レベルのものを我流で設計して手作りし、既に普及している OS をその上で動かして喜んでいたのですから。
■そういった体験がないと、技術の話で盛り上がれないですか。
盛り上がらないですね。「試してみたら、なぞの現象が起きました。なぜ起こるんでしょうか。」と聞かれれば、「どれどれ」と私も考えるし盛り上がることができますが、「検索したら詳しく解説しているページが見つかりました」と言われても、「そうですか」としか言えないですものね。
次回1月15日up予定
第13回(4)「技術を「好き」ということ」
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仙石浩明CTOの日記
KLab技術者サイト lab.klab.org
KLab株式会社が開発したソフトウェアノウハウ、実験的なサービスを公開
投稿日時 : 2008.01.08 12:52
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