TOP > スペシャルコンテンツ > CTOインタビュー > びぎねっとCTO伊藤氏 > 第3回(1)びぎねっとCTO伊藤氏「パソコン少年がオープンソース出会うまで」
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2006.11.16
第3回では、オープンソースを中心とした利用促進活動に力を入れている株式会社びぎねっとのCTO伊藤宏通さんにインタビューします。最近注目をあびる仮想化技術のひとつであるXenを中心に精力的な活動をされている伊藤氏。どのように技術力を磨き、今何を考えておられるのでしょう。

宇都宮のパソコンショップで始まったキャリア
■まずは一番初めにされたお仕事と、始める経緯を教えてください。
栃木県の大学に入学して、電気電子工学科で半導体を学んでいました。ある日、近くにPCショップができるということで遊びに行ったところ、アルバイトとして採用され、PCショップで働くことになりました。私が技術的に詳しかったこともあって、オーナーから店長を任されるようになりました。そこで4年程働きます。
■どんなものを販売されていたのでしょうか。
元々は、コンシューマー向けに、PCのパーツや製品などを販売していましたが、栃木という場所柄、近郊には中小企業のほか、大手メーカーの研究所や工場などもあり、法人向けにも製品や機器のパーツからシステム一式を販売するようになりました。
お客様もPC関連も詳しい方が多く、いろいろお話しする中で、そのつてで法人取引も増加していきました。辞める頃には、地方のPCショップとしては考えられない位の、部品量や種類を取り扱ってましたね。
■当時扱っていた製品でオープンソース関係というと何がありましたか。
当時もLinuxに詳しいユーザーの方がおられましたので、Linuxディストリビューションなどを販売していました。
■顧客の要望があればなんでも商品として扱うのですか。
宇都宮という商圏が限定されている地方のショップとしては、出来ることはなんでもやるという意識がありましたね。
地方の特徴を表す話としては、面白い話がありますよ。アプライアンスサーバーの筐体を、ある車関連の筐体も作っている会社にお願いして、見に行ったところ、PCと車部品の他にも、大手ゲーム会社さんのUFOキャッチャーの筐体も一緒に並んで作られていたんですよ。
■あはは。そのほかにPCショップで伊藤さんがされていた仕事はありますか。
買い付けもしていました。台湾のコンピュータ関連のイベントにも出かけ、新しい製品や技術に触れ、その場でサンプルもらって商談するといった、エキサイティングな経験もしました。台湾なのに日本の同業者の方と鉢合わせすることもありましたよ。
最近はコンピュータ関連のイベントもちょっと雰囲気変わりましたね。ビジネスチャンスが広がると言うよりは、見本市みたいな雰囲気を感じると、少し残念な気持ちです。
■ところで、栃木という場所に、PC関連に詳しい方が集まっていたのはなぜですか。
皆さん秋葉原など都心にも行きますが、お子さんや家庭があると毎日は行けないので、地元のショップに行くんですよ。来店された、近くの研究所や工場の研究者の方や、様々な業種のPCに興味がある方といったいわゆる濃いお客さんと、いろいろな話をしましたね。PC関連の話はもちろん、様々な業界の最先端技術や、当時はバブルがはじける前ですから、バブル系の派手なビジネスの話など。PCショップでありながら、一種の異業種交流のような場でした。
■いろいろな人が集まって、おしゃべりをしにショップに来るんですね。
当時のオーナーは、ショップを人が集まるたまり場のような場所にしたいという考えをお持ちで、PCショップでコーヒーを出すなど、積極的に場所を提供していたんですね。
私は、そういったたまり場の必要性を感じています。都心でも、秋葉原のぷらっとホームさんが店をたたんで以来、そういう場は少なくなったように感じます。
■たまり場はなくなってしまったんでしょうか。
オープンソースの諸活動は、そういったたまり場の流れを汲んでいる部分がありますね。私も参加している、カーネル読書会という勉強会は、異業種交流の要素も強いです。Linuxを中心とした勉強会ですが、仕事ではLinuxを触っていない、別の技術を専門とされている技術者の方もおられます。所属する会社の規模も業種も様々です。そのメンバーで勉強した後、わいわいと宴会すると楽しいですよ。
■伊藤さんにとってたまり場というのはひとつの原風景ですね。
そうですね。ちなみに、社長が本田さんだった頃のぷらっとホームは、技術者が中心となり、ビジネスを成立させているという点において、私の将来目標でした。
システム開発会社で磨かれた技術
■そして転職されるんですね。
約4年勤めたPCショップをやめることになり、当時のお客さんであった、栃木の宇都宮にある株式会社ランスという会社に転職しました。ランスはシステム開発の会社ですが、当時の技術統括部長が技術本を書かれたりしている魅力的な方で、その方を慕って集まる技術者も一流、受ける仕事は本当に幅広いという変わった会社でした。私は、Linuxベースのアプライアンスサーバーをメインに担当して、Cobaltが世の中に出まわる前に、客先で販売促進やデモなどをしていました。
■Linux以外はどんなことをされてたんですか。
大規模なファイルサーバーの構築、セキュリティを強化したいわゆるTrustedOSの導入、面白いところでは、組込みブラウザ開発、生物学の分類用ソフトウェア開発など。他にも、その会社はISPもやっていたのでその運用支援などもしていました。
その中で、ネットワークやセキュリティなどの様々な知識を身につけました。結果として、Linuxなどオープンソース全般とセキュリティは、私の得意分野になりました。
■本当に幅広いですね。それは宇都宮の商圏の話が大きいですね。
はい。とってきた仕事をやるという土地柄のほか、こちらの会社の社長さんが、とても人脈の広い方で、面白い仕事があると声がかかるという背景があったようです。
■社長も魅力的な方なのですね。
はい。書を書かせたら売れるくらい達筆、笛は国宝級の先生に習っていて、茶道の免許ももっているような多芸多才を絵に描いたような人でした。人脈は地元はもちろん世界中にあったようです。
■そして同僚のエンジニアの方も一流の方なのですね。
ええ。優秀でした。ネットスケープに誘われたメンバーもいました。その方はウィザード級でしたね。仕様を渡すと、彼はいくつか質問して、その後は黙ったまま、すごい集中力でプログラムを作り上げてしまう。そういったレベルの技術者が4.5人いましたね。
■なぜ栃木の小さな会社に、それだけ能力の高いエンジニアが集まったんでしょう。
当時の技術統括部長の影響が大きいと思います。技術力はもちろん、話題に尽きない面白い方でした。また、社長の魔力的な魅力にやられている方もいましたね。しかし、この会社は、市場に期待されながらも、残念ながらIPOの失敗で倒産してしまいます。
びぎねっとのCTOとして仮想化技術に携わる
■そしてびぎねっとに入社されるのですね。
私は、オープンソースを専門にやりたくて、OSS業界内でプレゼンスのあった宮原のところに軽い気持ちで相談に行ったんですよ。そうしたところ、「うちで働けば?」と言われ、その他にも会社経営に関する考え方などシンパシーを感じる部分も多く、びぎねっとに入社することになりました。
■現在は何をメインに担当されているんでしょうか。
現在は特に仮想化に関する技術全般を担当しています。
■仮想化技術は元々ご興味があったんですか。
前の会社でシングルシステムイメージや、クラスタリングで分散計算するシステムなども携わったことがありその延長で仮想化技術に強く興味がありました。入った当初は、仮想化技術はビジネスとするにはまだ早すぎるだろうと言う会社の判断でしたが、いよいよ仮想化の技術が盛り上がりを見せ、インテルのVT(Intel Virtualization Technology)が搭載されたタイミングで、びぎねっとでも仮想化に関する取り組みを本格化させました。
■仮想化技術の話をもう少し詳しくお聞きしてもいいですか。
わかりやすい言い方をすると、仮想化が進むと、システムの設計図を描いて、それをソフトウェアで変換してデータセンターに投入すると、ネットワークやスイッチなどのハードウェアを再構築なしに設計書どおりに動く環境を手に入れられるようになるということです。オンデマンドコンピューティングとか、ユーティリティコンピューティングとも言いますね。仮想化の技術の一つとして、オープンソースのXenという技術があります。
これでコンピュータの仮想化は実現可能となります。現在はネットワークやコンピュータソフトの仮想化も進んでいます。今後は、もっと下のレイヤー、例えば電力や電源といったものも仮想化していく必要があります。
具体的に言うと、システムの設計図さえあれば。昨日までは処理能力の高い1つの速いコンピュータだったものが、今日からはユーザに個別のサービスを提供できる1万台のコンピュータになる、といったことが出来るようになります。
仮想化技術はITインフラのあり方を大きく変えると言う信念のもと、この大きな変化に少しでも携わりたい気持ちで、現在はXenベースのシステムをより簡単に作れるようにする活動をしています。執筆や講習などの啓蒙活動も含まれます。
■CTOとしてはどんな仕事をされているんでしょうか。
現在、メンバーは8名程で、仮想化技術に関わっているのは3名です。仮想化以外の他の技術に関しても全般的に私が技術面を担当し、社長をサポートしています。
■他にはどんな活動されているんでしょうか。
IPAの未踏ソフトウェア創造事業/未踏ユースのお手伝いもしています。応募して書類面談を通過した若い技術者と面談したり、事業を支援するといった業務もやっています。
次回は11月22日up予定
「人脈をの作り方とは」
投稿日時 : 2006.11.16 17:12
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