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2008年02月05日
常に目の前にある課題から「逃げない」ことが重要だと語る楽天技術研究所 代表の森氏。(3)では、転職に至った経緯と、困難な課題を乗り切るためのチームワークの作り方について、森氏のポリシーをお伺いします。

■その後はどうされていたんですか。
2005-2006年は、またちょっと違う仕事をしていました。物流会社の戦略コンサルティングとIT投資の立案をやりつつ、並行して、当時、アクセンチュアのアジア・パシフィックの研究所を設立する動きがあったのですが、それに関連した様々な業務をしていました。
■研究所設立ですか。
シリコンバレーの近くに、パロアルトという歴史的にも偉業を成し遂げたAT&TやXeroxの研究所がある、研究者にとっての聖地のような場所があるんですが、アクセンチュアもパロアルトに研究所を持っていて、そこに行って研究所や研究者について調査したり、世界に3箇所にあったアクセンチュアの研究所の研究資料の日本語訳を監修したり、研究所のビジョンを紹介する資料を作成したり、日本のエクゼクティブにアクセンチュアの研究内容を紹介するセミナーを実施したり、日本での研究オフィス設立企画やアジア・パシフィックで研究所を作るにあたっての手伝いをしていました。
■転職するお気持ちはどう高まっていったのでしょう。
これらの仕事を通じて、実際に世界各国のコンサルタントやインフラのスペシャリストや研究者と話し合っていくうちに、自分の中でいろいろな問題意識が生まれました。
■問題意識ですか。
ひとつは、タイムマシン経営への違和感です。アメリカで流行った技術は1年後日本で流行ります。日本のIT/インターネット業界では、その時差を利用したビジネスが多いんです。中国や、マニラ、インドのオフショアの話を聞くにあたり、日本発の何かを作っていく必要性を強く考えるようになりました。だから次は日本の会社に転職しようと思いました。
■日本の会社が良かったんですね。
それから、研究所で様々な研究を見ていくにつれ、世の中はインターネットの可能性を過小評価していると感じるようになりました。インターネットが、センサーやICタグ等のユビキタス系デバイスと融合していくと、すごい展開が起きて、その後に大きなインパクトがやってくると思いました。当時僕のいた、コンサルティング業界のターゲットは企業の基幹系システムがメイン。ここにいては、そのインパクトに立ち会えない、でも立ち会いたい、インターネットをビジネスにする企業に行こうと思いました。
■日本で、インターネットをビジネスにする会社ですか。
最後に、本当に役に立つ研究開発というプロセスを実装してみたいという思いです。大学の情報理工学部系の学部イベントで、大学の研究室が企業の人を招き、自分達の研究をお披露目することがあります。ところが実際に、研究や先端技術を説明しているうちに、大学側も企業側も「それって何に役にたつんですかね」となってしまう場面に遭遇することも少なくありません。研究開発とビジネスを繋ぎたいと考えました。
■日本発の何かを作るための仕組みですね。
技術を確保する手段としては様々なオプションがあります。どこかに発注してもいいし、自分達で勉強してもいいし、M&Aで買ってもいい。でも、ある部分は自分達でやらなければ、技術をコントロールする能力が組織に身につきません。だから企業が技術をガバナンスするためのインプットとなる研究開発は重要で、本当に役に立つ研究開発を組織化してみたいと思いました。
■その結果が楽天株式会社ですね。
漠然と、楽天だなと思っていましたが、加えて人の縁もありました。
■どなたかに誘われてですか。
アクセンチュア時代のメンバーのひとりが楽天にいて、彼のセッティングで、楽天の開発担当執行役員であった安武を紹介されまして。お会いして、自分のやりたかったことが楽天で出来ることがわかりました。
■今はどういったお仕事をされているんですか。
研究所の代表として、研究所の立ち上げとマネジメントを担当しています。そのほかにも、研究所のコンセプト作りや、話題の新しい技術を楽天のビジネスに導入していくという仕事をしています。取り組んだうちの一つには、Ruby on Railsを楽天の開発に導入するという企画があります。他にも、電気通信大学とマルチメディアに関する一連の共同研究、Ruby開発者まつもとゆきひろ氏 楽天技術研究所フェローとの大規模分散に関する共同研究なども行っています。
■森さんの仕事上のポリシーってありますか。
今までの経験の中では、すごく困難なプロジェクトにアサインされることが何度もありました。そういう時には、マジックが必要だと思っています。
■マジックですか。
そのために、ひらめきを大事にします。自分のひらめきもそうですが、メンバーひとりひとりのひらめきを尊重することが大事だと考えています。その人が、その瞬間、そういうことを言ったということには、なんらか訳があると言う事を忘れないようにしています。
■訳を考えることが大事ということでしょうか。
明らかに論理的に間違っていることを発言したとしても、その人がこの状況の中で発言したのには何らかの意味があるはずだと理解するように努めます。その人のやりたいことや、主張していること、反抗していること、表情、それから自分自身の嫌だなと思う気持ち、そういう違和感を無視しないようにしています。やりすごさずに、何がおかしいのかをその場で考えて、仕事のやり方かえたり、資料をかえたり、話をしたりします。
■はっと感じた違和感からヒントを得るんですね。
なぜひらめきを尊重する必要があるかというと、ロジックを組んでひらめきを押し殺すより、ひらめきが出た瞬間こそが一番エネルギーが高い、一番いい瞬間なんですね。だからひらめきが消えないうちに動くと、そのエネルギーを利用できるので、すごくスムーズに物事が進むんです。思いついた瞬間にやるのが一番早いってことですね。
■ひらめいたその瞬間を逃してはいけないということですか。
ひらめきを尊重しようとすると、自然とチームメンバーの表情や声や意見に気を配るようになります。そうすると、瞬間を逃さずに「これやって」と言えたり、逆に「やろうか」と言ったりすることができます。こうやってお互いを生かしていかないとマジックは生まれません。
■お互いを生かすことがマジックを起こすんですね。
これは習慣化してやる必要があります。思いつきで突発的だったり、波があったりすると信頼を損ねるだけです。常に自分のひらめきも相手のひらめきも尊重する。これがうまくいき始めると、それこそ魔法のようにすごい成果を出し始めるんですよね。
■マジックとは、魔法のようなすごい成果が出ることですか。
僕が一番好きな状態は、チームを組んで仕事をしたことで、自分が想像した以上のアイディアが実装されることです。だからチームを組んで仕事をするわけで。アイディアは、一人より複数で出し合ったほうが、それも仲の良い人と話しているときに出やすくなりますよね。アイディアを受け止めて、引き出してくれる人が必要なんです。それがチームです。
■マジックは一人じゃ起こせない、チームだから起こせるんですね。
それぞれのひらめきを尊重すると、お互いアイディアが出やすくなって、マジックが起こるんです。今までの仕事の経験を通して得た、僕のポリシーです。
次回は2月12日up予定
第14回(4)「ネットで起こる次のインパクトは何をどう変えるか」
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