「繋げる」から「繋がる」への革命/「Making Things Talk」
2008.11.24
と言いたくもなります。「Making Things Talk」(Tom Igoe著・オライリー)レビューです。
この本、内容的には Arduino というワンチップマイコンを使って、いろいろする...という電子工作系の「使い方の本」なのですけども、著者の力点はそんな些細なことにはないですね....
この手の本の場合「どう作るか」「どう繋げるか」で、大概の著者は息切れします。「繋がった・万歳!」なんですけども、この本はそもそもの最初から
繋がる...そんなんアタリマエ。 繋がるから何を作ろう?
という本なんです....これ著者の「立ち位置」が圧倒的に新しいです。すばらしい!
まあ、実装的には「Arduino マイクロコントローラ+手持ちのパソコン+インターネットサーバ+ユビキタスないろいろな機器」のコンビネーション技の実例・解説なのですが、それらを「プロトコルによって通信しあうモノたち」として捉えるわけですが、「はじめに」ではこうこの本での「プログラミング・パラダイム」を宣言してます。
現実の世界に戻ると、私たちの周りにはいろいろな電子機器がある。時計付きラジオ、トースター、携帯電話、音楽プレイヤ、子供のおもちゃ、などなど。役に立つ電子機器を作るには、多大な労力と深い知識が必要かもしれない。また、これらの機器を、役に立つ形で相互に会話させるにも、同じくらい深い知識が必要だとしてもおかしくない。しかし、必ずしもそうではないのだ。電子機器は、単純で理解しやすいインターフェイスを持つモジュールを組み合わせて作り上げることが可能だし、実際にそうやって作られているものも多い。インターフェイスさえ理解すれば、モジュールを組み合わせて何でも作れるのだ。このことを、オブジェクト指向ハードウェアとして考えてみてほしい。モノどうしが会話する方法を理解することが、オブジェクト指向ハードウェアを実現する上で一番重要だ。
オブジェクト指向ハードウェア! Smalltalk が紹介されたときに、
オブジェクト指向言語=メッセージ・パシング・モデル
というような紹介がありましたが(今は主流じゃないですが....)、要するにオブジェクト指向ハードウェアの場合は、
互いに通信しあう、ということに集中して理解しよう!
....あとのややこしいことは、ファームウェアが面倒を見てるくれるのです。そういうイイ時代がすでに到来したのです(苦笑)。その新しい時代の「技術書」がコレなんですね。勿論この本はそういう「哲学」を述べてるだけの本ではなく、実際の「作り方」を実用的に紹介している本なのです.....もはやタイミングチャートとか、ポートの説明とか、そういう問題じゃないのです。
Aチップの○番ピンと、Bチップの○番ピンを繋いで、こういうプログラムで動かせば、○○できちゃう、簡単だろ。
だから、全体のシステムにまで見渡し、それを「考える」余裕が筆者に与えられているわけです。ここらへんの空気がすばらしい。その高みからの光景が、イマの電子機器の「相互に繋がりあおうとする地図」として示されているわけです....これを実感するだけでも、この本は「買い」です。で...イタリアらしい色彩感(こういう色が特徴的■)が随所に見られる造本デザインの冴えもあって、この本、
自分で Arduino を使って電子工作しないとしても、買って損はなし
(とはいえ、電子工作したことないと、よく判らないのでは?と思うところも少しはありますが...)です。今年は熱い哲学の本がよく出てる印象がありますが、そういう意味では本年最高の一冊です。ぜひお試しあれ。
(あと実例紹介で、アーチストが作った面白装置をいろいろ紹介しているのが印象的。要するに簡易版の岩井俊雄、って感じです)
★★★★★
投稿者 : 杉浦 こずえ | 投稿日時 : 2008.11.24 12:18


