灰色の唄を歌おう...(後編)
2009.02.15
今更なんですが、少し前(2006年冬)のアニメ「あさっての方向。」という作品にハマってます...このアニメのBGMで、不思議な現象が起きる時に鳴る曲(光宗信吉作曲)で、木霊が響いていくような特徴的なリズムがあって、それが
回文のようなリズム
を使っているんですね。言い換えると、
リズム的に先頭から見ても末尾から見ても、同じになるリズム
で、現代音楽だとメシアンが「不可逆リズム」と名づけたちょっと面白いリズムです。
しかし、逆に考えてみると実に興味深い現象です。シンメトリーというのは一般的な表現のイディオムで、建物だったらシンメトリカルなのはアタリマエで少しも珍しくはないですよね? しかし、音楽ではシンメトリーは避けられる傾向があります: だってモチーフが動いていきにくいですからね....実際「あさっての方向。」の曲では、最後の音色が別な繰り返しリズムとダブるかたちになっていて、シンメトリカルな印象を薄めています。
で、ですがこのエントリはBCDやグレイコードを扱った「灰色の唄を歌おう...」の後編なんです。グレイコードは任意の表現ビット数に応じて、実はとっても簡単に作ることができてしまいます。その作り方のポイントはですね、
グレイコードはフラクタル図形を作る要領で作れる
ということです。言い換えると、「何ビット目が変化するのか?」ということに着目して各bit別の列を並べると、
2bit 121
3bit 1213121
4bit 121312141213121
のように、無限に成長する列を定義できます。これは中央の値でシンメトリーであり、しかも A-中央値-A の「A」が更に同じ構造を繰り返し持つ構造なのですね。BNFで書くと
<gray> :- <gray> digit <gray>
|- digit
という再帰構造で定義されるわけです(具体的に何ビット目を変化させるか、自体はグレイコードの本質とは独立であることも注意)。
ですから、グレイコードの構造は非常に興味深いものがあります。応用範囲も実はいろいろ広いわけで、たとえば隣り合う兄弟と1bitしか厳密に違わない性質は、遺伝的アルゴリズムの「遺伝子」に使いやすい性質ですし、パズルの解法で再帰的に総当りをする時のカウンタ代わりにも使える面白い技法だと言えます。更には、丸め誤差のない実数値表現とか、算術符号化圧縮とか、デジタルだけども無限に細かい連続値(アナログな実数値)をシミュレートする応用があったりします。応用範囲はかなり広いです....→参考「グレイコードと実数」立木秀樹
このグレイコードを応用した「歌」が、YouTube に上がってますね。その名も「グレイコードカウンタの歌」という画像です。何しているかは上記の説明で判ると思います。要するに 8bit グレイコードの最初から最後まで(256通り)を並べて、それぞれの変化ビットを音として鳴らすというアイデアですね。
ですからこれ、実際には「回文音楽」であり、しかも自己相似なフラクタルですから局所的にも「回文音楽」なのです....スタティックな構造自体はすぐに聞いて取れますから、理解可能な音楽ですけども、やはり動きが決まりきっていて.....という印象は蛇足かな。
投稿者 : 杉浦 こずえ | 投稿日時 : 2009.02.15 11:09





